2014年3月11日火曜日

満足感を高めて習慣化させる3つの条件

お客を「虜」にするための3つの秘訣
活用してみたい「習慣化」の法則
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140307/260688/?rt=nocnt


ユーザーの満足感を高めて習慣化を実現させるために、1)社会的なリターン、2)追求の喜び、3)個人的な達成感の3つの満足感の実現を提唱している。
 「社会的なリターン」は、他人に認められたり、受け入れられたり、重要な人物だと思われることで達成される。フェイスブックの「いいね!」ボタンとコメントがその例だ。「いいね!」やコメントをたくさんもらうとまたフェイスブックに書き込みたくなる、という心理的なメカニズムが働き、頻繁に書き込むようになる。
 2番目の「追求の喜び」は、新しい情報がどんどん入ってくることや情報収集することによって得られる興奮だ。エヤール氏は、ツイッターやピンタレストの人気の秘密は、この「追求の喜び」にあると説明する。最近ニュースアプリが人気だが、ニュースという新しい刺激に興奮感を覚え、その中から自分の興味がある情報を選び出して読むことで満足度を得るのではないかと思われる。
 最後の個人的な達成感は、目的を達成することなどで得られるが、ゲームアプリなどではとくに重要な動機付けになると考えられる。

 エヤール氏は、金銭的な見返りがない方がこれらの満足度が高い傾向にあることを指摘している。質問に答えた人に報酬を提供する質問サイトは失敗に終わったのに、回答者に報酬を提供しない質問サイトが成功したのは、金銭的な見返りがない方がユーザーの満足度・達成感が高いという心理的な理由からだと説明する。
 では、この見返りを必要としない「個人的な達成感」の源泉は、一体何なのだろうか? 行動経済学では、それについても数多くの研究を重ねている。人が金銭的な報酬がないのに献血をしたりボランティア活動に従事したりするのは、誰かの役に立ちたいという「純粋な善意や他愛心」からなのか、それとも自分が「社会に認められる喜び」に起因しているのか、を追求してきた。
 上記の質問サイトでの回答行動、そしてアマゾンや映画レンタルサイトなどでのレビュー行動では、どちらの動機も行動の理由になり得るし、金銭的な見返りがないことに意味があるのは、どちらの動機にも当てはまると考えられる。

時間をかけさせて生む「イケア効果」

 例えばサービスの利用が習慣化する過程で、人々はしばしばそのサービスに対して時間やお金の投資をするが、それがサービスを辞められない原因となることが多い。質問サイトでの回答や商品のレビューのような活動に貴重な時間を使うと、そのサービスに対する愛着が生まれる、というわけだ。
 米ハーバード大学のマイケル・ノートン准教授、米デューク大学のダン・アリエリー教授らはこれを「イケア効果」と呼ぶ。イケアの家具は自分で組み立てなければならないが、組み立て作業に時間を投資したことによってイケアの家具への愛着が増すという理由からだ。
 その文脈で考えると、アプリやオンラインサービスに対する時間投資は、イケアの家具の組み立てよりもはるかに愛着感を高め、やめるのを困難にする。例えば、ツイッターでフォロワーを増やしたり、フェイスブックで友人を探したりするのには時間の投資が必要である。
 多くのフォロワーがいるツイッターのアカウントや多数の友達とつながっているフェイスブックをやめて他のSNS(交流サイト)に移行する場合、また最初から友人やフォロワーを集めなければなりないというコストが発生する。つまり、時間を投資すればするほど、そのサービスを辞めたり別のサービスにスイッチする際の心理的コストが上昇するのである。
 質問サイトではしばしば良い回答に対して点数がついたり、ベスト回答者のランキングが公表されたりするが、点数やランキングの表示は、個人的な達成感を実現するために有効であるだけではなく、点数やランキングの存在がサービスをやめたくない理由になり、そのサービスを使い続ける主な動機にさえなり得る。
 最近ニュースアプリの人気が出ていくつものニュースアプリが発表されているが、筆者はその中でもNewsPicksに注目している。エヤール氏が提案する達成感のメカニズムの多くを押さえるデザインになっているからだ。NewsPicksは単に集めたニュースを表示するだけではなく、ユーザーが自ら興味のあるニュースを集めてきて紹介することができるアプリだ。
 ユーザーはニュースに対してコメントを書き込むことができ、他のユーザーのコメントに対して「いいね!」ができる仕組みになっていて、エヤール氏が提唱する「追求の喜び」と「社会的リターン」の両方が実現されるデザインになっている。しかも、ユーザーの中には著名人が多いので、社会的なリターンはより高くなる。

筆者も愛着が増してしまったNewsPicks

 コメントをしたユーザーへの報酬はないが、それこそがNewsPicksが著名人も引き付けてユーザー獲得に成功した理由かと思われる。NewsPicksでは、1週間で得られた「いいね!」の数に基づいてユーザーのランキングが公表されている。ユーザーランキングに載ることでさらに個人的な達成感が実現でき、アプリの使用回数が増え、その結果アプリの利用が習慣化し、やめるのが困難になるという仕組みだ。筆者も多忙な中でもこまめにNewsPicksを利用した結果、利用が習慣化したユーザーの1人である。
 NewsPicksのアプリのデザインは、行動経済学の視点から見て大変よくできている。NewsPicksは昨年9月に無料版がリリースされ、今年の2月から有料サービスも開始した。無料版だけだった期間に多くのユーザーがNewsPicksを頻繁に利用しすでにアプリの使用が習慣化した後、有料サービスを開始するというのは、極めてよく計算されたリリースの方法だと考える。
 行動の習慣化を研究課題としている行動経済学者にとってアプリのデザインはとても興味深い研究課題であり、行動経済学にはアプリのデザインに貢献できる研究の蓄積がある。米ワシントンDCでは、アプリのデザイナーと行動経済学者の合同勉強会が毎月開かれているが、日本でもそのような勉強会が始まれば、双方に利益がある議論やコラボレーションが展開するのではないかと思う。










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