2014年1月12日日曜日

市民のエネルギー、知恵、夢、自己実現の力を引き出す仕掛け

人口減少時代に、人口を10%も増やし、いきいきと若返ったまち

http://diamond.jp/articles/-/45759

市民のエネルギー、知恵、夢、自己実現の力を引き出す仕掛け

 「市民が主役」とは誰でも言うことができるが、実際にできているところは少ない。井崎さんは、街づくりに、「市民のエネルギー、ノウハウ、夢、自己実現の力」を具体的に引きこんでいった。市の各種のイベントを「市民実行委員会」方式で運営、また公共施設の指定管理業務も市民団体やNPOに積極的に委託した。
 これによって、各施設の自主企画事業が急増したという。市民からは「以前に比べてすごくサービスがよくなった」「楽しい街になった」との声も寄せられるという。市外からも「流山の町の規模で、毎日よくこれだけの催しや活動ができますね」と言われるという。

 行政直営のときと比べて、市民の自由な企画力と行動力がフルに生かされるようになり、同時に市民満足度も飛躍的に高まった。「まさか、リタイア(退職)してからこんな楽しい仕事ができると思わなかった」という市民の声も上がっている。そうした声を聞き、「行政はあまりお膳立てする必要はない、おせっかいを焼き過ぎないこと、市民がやりたいことを後押しするだけで十分」だと井崎さんは実感している。
市長が代わると、街づくりの方針や方法が変わってしまうことがよくある。井崎さんは、自治基本条例や市民参加条例、景観条例、街づくり条例などいくつもの条例を整備してきたが、これからも市民参加や良質なまちづくりに関して前進を続けるためにできるだけ条例化していきたいと語る。とりわけ、市民投票条例や健全財政条例など、市民自治に関する骨太のルールを井崎さんは後の世代に遺したいと思っている。

これは壁じゃない、扉だ。

 「20年後、30年後を構想して具体的に取り組む。任期4年の市長は次の選挙を考えないわけにはいかないが、選挙にとらわれ有権者の声に対応するだけでは都市の質と格を上げることはできない」と語る井崎さんの目は、流山市が長期的に目指す姿を捉えている。日本の多くの都市が、定住人口や、交流人口さえも将来的に減らしていく中で、流山市はこの集団から抜き出た存在になろうとしている。
 街の総合プロデューサーとしての、ブランド・コンセプトの決定、メインターゲットの設定、埋もれた資源の価値を引き出す演出、どれも素晴らしい。そしてそれらを、「母になるなら、流山市。」というメッセージで表現したことも秀逸である。だが井崎さんが最も凄いのは、これを民間企業の経営ではなく、自治体経営という立場でやりきったことにある。
 民間企業ですら「選択と集中」のリストラクチャリングは困難であり、相当の勇気と覚悟を持った経営者にしかできない。まして自治体である。ターゲットやマーケティングという概念が容易に受け入れられない世界であり、強い抵抗が渦巻き、選挙によって洗礼を受ける世界である。今は、どの街でも高齢者が圧倒的多数で、高齢者のための街づくりが自ずと優先されるが、それだけでは未来にわたって持続可能な街づくりはできない。ブレない思想を持ち続け、常識に屈せずに取り組み続けてきたことこそ、井崎さんの凄さだと思う。
 「試行錯誤と戦いの連続、成功事例なんてとんでもない」と井崎さんは言う。かつては、抵抗する幹部職員やお手並み拝見モードの職員が多かった。しかし徐々に、着実に、同じベクトルの職員が増え、より少ない職員数で、より多くの仕事を、より短時間にこなせるようになってきた。
 結果として、市民の市役所への評価も改善されつつある。市民の意識調査で平成21年度に始めた「流山市行政を信頼するか」という問いに、「する」と答えた市民の割合は46.5%だったが、23年度に過半数を超え、24年度には52%に達した。「ようやく、市民の評価も、市の知名度や地域イメージも変わり始めたところです。これからが勝負です」と井崎さんは付け加えた。
 「これは壁じゃない、扉だ」市長室の壁に飾られた色紙にはそう書いてあった。







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