2014年1月8日水曜日

”物語”の力。活動背景・共有する価値観・活動理由。self, us, now.

シリーズ未来をひらく2 
“物語”の力が社会を変える
ジャンル 国際 社会問題 災害 地域 その他
 
 
出演者糸井 重里 さん(コピーライター)室田 信一 さん(首都大学東京准教授)
“つながり力”から、日本に新たな活路を切り開くヒントを探るシリーズ2夜目。私たちの暮らし、地域社会が抱える様々な課題を、人と人との「つながり」を広げることで克服しようという試みが始まろうとしている。これまでも市民運動やNPOなどが活動を続けてきたが、より広範で推進力を持つ動きに中々つながらないのが現状だ。こうした中、多様な人々を結びつける市民運動を理論化し「分断されたアメリカを一つにした男」として世界的に知られるマーシャル・ガンツ博士(ハーバード大)が来日。日本各地で活動するNPOの代表ら47名を集めてワークショップが開催された。ガンツ博士が訴えるのは、人々をつなぎ、動かすことのできる「物語」を共有することの重要性だ。カリスマ・リーダーに頼らず、一人一人の当事者意識を高めて社会を変革する可能性を探る。

クローズアップ現代 シリーズ未来をひらく2 “物語”の力が社会を変える
2014年1月7日放送 19:30 - 19:58 NHK総合
国谷裕子 糸井重里 室田信一
http://datazoo.jp/tv/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E7%8F%BE%E4%BB%A3/692880




オープニング

様々な課題を抱える日本において、市民運動やNPOに大きな期待が集まっているが、多くの現場では支援があつまらず、活動の輪が広がらないことに頭を悩ませている。先月、ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士が講師となり、全国のNPOなどの代表者が集まり勉強会が行われた。そこで語られたのは物語の力。物語が社会をどう帰るかを探る。



“物語”が人を動かす
未来をひらく“物語”の力 市民の力

世の中の為に何かをやりたいという人たちの意欲や、知的エネルギーを色々な形で引き出すことができれば、よりよい社会に向けた大きな変化が期待できる。今日のテーマは市民の力を如何に引き出すかがテーマ。内閣府の調査によると東日本大震災後、ボランティに興味があると答えた人は58パーセントに上るのに対して、実際に参加した人は27パーセントにとどまる。やりたくても1歩を踏み出せない人も多い。一方で各地のNPOや市民運動は人や資金の不足といった悩みを抱えている。先月このようなNPOや市民運動の代表者を集めた勉強会が開かれ、ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士が講師を務めた。彼は長年草の根活動に携わっていると共に、2008年のアメリカ大統領選では初の黒人大統領オバマ大統領を誕生させた人物として知られている。彼は人を動かすためには感情移入ができる物語が必要だと語る。

“物語”が人を動かす
「活動が広がらない」悩める現場

先月東京で日本各地で活動する市民活動家やNPOの代表が集まる勉強会が行われた。社会活動家の社会的に孤立する人を支援している湯浅誠さんや、紛争地域で難民支援のNPO代表を務める大西健丞さんなど、多くの人たちがどうすれば人々に行動を起こしてもらえるのかという悩みを抱えていた。講師を務めるハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士はまずリーダーの役割について語った。

ガンツ博士の言葉に熱心に耳を傾けるのは東日本大震災の復興支援を行う佐野哲史さん。佐野さんが活動拠点にしている宮城県南三陸町は津波で地域漁業が壊滅的な被害を受けた。佐野さんは地域の漁師を助けるため観光客を呼びこむ漁業体験ツアーを主催している。ツアーの企画から案内役まで佐野さんは1人で切り盛りしており、一緒に活動をしてくれる人が現れないことに焦りを感じていた。

ガンツ博士は多くのリーダーは責任感から多くの事を抱えすぎていると指摘する。求められるのは周りの人を巻き込み、周囲の人が自発的に活動することを促すこと。ガンツ博士は「リーダーとは肩書きや地位のことではなく目標を達成するために仲間を募り力を発揮してもらえる環境を整えること。それができる人こそが真のリーダーだ」と話した。周りの人を巻き込むことの大切さを博士は体得してきた。自分が前にでるのではなく、当事者である市民1人1人の共感を得てきたことがより大きな活動へと広がった。博士は「人はきっかけさえあれば誰かと思いを共有し行動したいと願っている。そこで信頼を結び関心をもってもらえば、また別の人へと自然と活動は広がっていきます。1人1人の力は弱くてもそれらがつながれば大きな力となっていく」と話した。

“物語”が人を動かす
人を動かす“物語”の力

社会福祉法人につとめる平田智子さんは障害やひきこもりなどで社会から孤立している人に雇用をつくる就労支援を行っている。平田さんの元には連日、自治体や企業が視察に訪れ、理念には賛同してくれるものの、実際に職場を提供してくれるところはなかなか現れない。平田さんは「職場が優しくなる、笑顔が増えるということでは説得力が薄くてなかなか受け入れてもらえない。受け入れ先をなんとかひろげていかなければならない」と話す。

ガンツ博士は人々に行動するきっかけや勇気を与えるのが「物語」だと話す。いくら立派な活動でもそれがなければ誰もついてこない。物語には3つあり、自分の活動の背景である「セルフ」、相手と共有する価値観である「アス」、今行動する理由である「ナウ」があるという。アメリカでいじめを無くす運動を3年前に始め全米で約50万人が賛同した男性の例をあげながら、ガンツ博士は物語のエッセンスを伝えていった。

ガンツ博士は「人々が行動を起こしてくれるのは理念ではなく感情に響いたときです。大事なのは自分を突き動かす動機。その根底にある価値観を言葉で表し相手と共有すること」と話す。また、ガンツ博士は参加者の大西健丞さんの「セルフ」の物語から物語を共有することの重要性を教えた。参加者は「自分の物語をつたえることが非常に重要であるということを短時間で学ぶことができた」などと話した。

“物語”が人を動かす
未来をひらく“物語”の力

糸井重里さんはガンツ博士の主張に対して「企業や宗教は歴史的にすべてこのやり方をしてきた。セルフはまず自分が裸になってみせること。ある種の古典だと思った」と話した。また「アスは私とあなたの利害が一致し握手すること。ナウは具体的になにをするのかということだと思う」と話した。自分の動機について、糸井重里さんは「大したことないと思っているが、大したことないという事実を語っている」と語った。首都大学東京准教授の室田信一さんは「このワークショップをするのに8年間かかった。自分で発進をしてきたつもりだがなかなか人の心に届かなかった。今回自分について語ることを改めて学んだことで、さらに今後の展開を期待している」と語り、何故自分の事をかたれないできたのかという問について、「多くの活動家は人に対して平等に働きかけなければならないという思いが強いため、自分について語ることが難しくなっている。しかし、ストーリーオブセルフをアスに転換していくことで広げていくことができる」と話した。

糸井重里さんは日本の活動家が自分の活動を語りにくい理由について、「私利私欲でやっているという見え方をしたくないからではないか。しかし、良い活動をやっている人たちは平気で楽しいからだと語る。その飛び抜けた感じはかえって信用できる。そういうほうが手伝いたくなるし、「私」のない活動は無いと思う」と話した。室田信一さんは「物語はだれでももっている。しかし語り方をしらない。大事な事は語る環境をどのように整えるのかということ。安心して語れる環境があれば人々は安心して語りだすと思う」と話す。また、糸井重里さんは「知的エネルギーをもっている人が活躍するためには具体的なアイディアが必要だと話す。営利企業が考えていることを善意の人たちも考えるべきではないか」述べ、これに対して室田信一さんは「大事なことは自分が問題意識をもっていて行動をとっている。そしてそのストーリーを共有して一緒に歩んでいく仲間を広げていくこと」と話した。

0 件のコメント:

コメントを投稿