2014年1月3日金曜日

『仮説⇒検証』の時代から『事象⇒相関発見⇒チャレンジ』の時代

ビッグデータがマーケティング史上“超ヤバい”理由

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20130806/1051330/?ST=life&P=4


いかに相関関係をたくさん抽出できるか

 また、新たに何かを計測したり観察したりする際は、それらのデータが大量に集まったときに「何かを抽出できるのではないか」という思考実験のもとに仕組みを設計することが重要だと思います。例えば、自動販売機でどのようなデータ収集をするかと考えるときに「うまく観測すれば、サンプル陳列スペースのどの位置が一番売り上げが高いかが分かる」というアイデアが出てくれば、スペースごとに売り上げを集計する仕組みを組み入れなければ、ということになります。
 さらに考えれば、それぞれのスペースにいつどんな商品が置かれているかというデータをとると、商品のブランド力とスペースの販売力を分けて考えられる、という着想にまで至れるかもしれません。データ収集の仕組みの仕様を決定するときにこういった検証を行わないと、宝の持ち腐れになってしまう、というわけです。
 ビッグデータ周りのことで、マーケターにとって直感的に飲み込みにくいのが(3)の「相関関係を重視する」というポイントです。

 冒頭に挙げた事例やアマゾンの例でも、ビッグデータから洞察を得る場合は「相関関係を見つける」ことから入っています。加えて相関関係に基づいて洞察を得てはいるものの、その理由、つまり因果が説明されていない場合が多くあります。それは例えば過去の株価変動を説明する変数が見つかり、それが株価予測の因子として精度高く活用できたとしても、それがなぜかは結局分からない、などというようなケース。言ってみれば、「なぜそうなるかは分からないが、結果が合っているので良しとしよう」という考え方・姿勢のように感じられます。
 マーケティングで分析や調査を習うなかではまず「仮説を持ち、その検証をするために調査を行う」という作法を学びますし、データの読み方を習うときにはいの一番に「相関と因果を混同しない」(例えば夏場の電気消費量とアイスクリームの消費量は相関しますが、因果ではありません。ここには気温上昇と電気消費量上昇と気温上昇とアイスクリーム消費量上昇という2つの因果が含まれています)ということをトレーニングされますので、どうもこの考え方に違和感を感じるのです。
 しかし考えてみれば、今までの調査や分析で仮説や因果が重視されてきたのは、事象から相関関係を抽出するのが難しかったからにほかならないのかもしれません。観察できる範囲に限界があったり、認知的バイアスもあったりして、人間の手では観察しにくかった相関関係をうまく炙り出してくれるツールとしてビッグデータを捉え、どのようにアイデア・着想を継続的に量産しながらうまく洞察を抽出していくかがこれからのマーケターの成否を分けるカギのひとつになるでしょう。
 最後にビッグデータと付き合っていくうえでのチャレンジを指摘したいと思います。私が考えるチャレンジは「ビッグデータで得た洞察をもとに消費者にメッセージを届けるにはどうすればよいか」ということです。
 アマゾンのような形で何らかの推薦情報をユーザーに届けるとすると、何らかの形で個人情報にアクセスすることが必須になります。しかし、企業が自前でユーザー情報を収集・管理するには大変な労力がかかりますし、すでにこれらの情報を保有しているクレジットカード会社やEコマース会社と提携するのも費用や制約の面から容易ではありません。
 そうなるとOne To Oneではない、マス的なアプローチのコミュニケーションでのメッセージ伝達を設計しなければならなくなるわけですが、今までのコミュニケーション制作やメディアの考え方は価値観や性別×年齢などに基づく従来的なターゲティングを前提としており、個別具体的な相関関係をもとにメッセージを組み立てるなどということが既存の枠組みの中で成立するかどうかはまさにこれからの課題です。
 またビッグデータは過去の相関関係を発見する非常に強力な武器ですが、将来どんな相関や変化が新たに発生するかを予見することはできません。ですので、イノベーションと呼ばれるような革新的なアイデアのシーズを獲得するためには、
・時系列にデータ中の相関関係を観察し、その関係に変異が発生するポイントを発見する
・その変異がいつ何をきっかけに起きているかという仮説を得る
・その変異を未来に起こすとしたら、何が変異点になるか考える

 などの、単純に相関関係を発見するのとは違ったアプローチが必要になるでしょう。
 これらのことを解決したプレイヤーがビッグデータの時代のマーケティングをリードしていくことになるだろうし、自らがその手法を切り開いていきたいものだと思います。
 なお、本稿では便宜上ターゲットいう言葉を「商品を買ってくれる消費者」という意味で使ってきました。しかし本来はターゲットというのはもっと複層的な意味を持っており、ブランドビルディングを考えたりマーケティング施策を開発したりするときは、そこを整理して理解しなければなりません。
 このテーマはかなり面白いので、次回以降改めて議論していきます。

0 件のコメント:

コメントを投稿