2013年9月26日木曜日

リボン型ビジネスモデル

リボン型ビジネスモデルとは?

リボン型ビジネスモデルとは、ユーザと事業者の間に立ち、プラットフォームとして両者をつなぐサービスを提供するモデルのことです。

▼リボン型ビジネスモデルとは?
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このビジネスモデルは、ある片方のニーズだけ満たすだけではいけません。「ユーザ」「事業者」両者のニーズを満たし、両者をつなぐサービスを提供することで、成り立っているビジネスモデルです。

さらには、「ぐるなび・食べログ」のように、同じ飲食店情報サイトを運営しながらも、その立ち位置によって、提供価値、戦い方、ビジネスとしての評価のされ方が異なってきます。
http://www.find-job.net/startup/how-to-find-the-business




「食ベログ」vs「ぐるなび」~リボン型ビジネスモデルから学ぶ 時価総額1000億円の事業機会の見つけ方

    
2013/09/26
top5Webサービスには、フレームワーク化できるビジネスモデルがいくつか存在します。今回はその1つ「リボン型ビジネスモデル」を、代表例の「ぐるなび・食べログ」の比較を中心に解説します。

こういったビジネスモデルは、まだ参入されていない業界・業種を探して横展開も可能です。本文末尾に、参入余地がありそうな業界を書きました。ぜひ皆さんが新たに事業を企画する際の参考にしてみて下さい。
■目次
【1】リボン型ビジネスモデルとは?
【2】ぐるなび・食べログから学ぶ、2つのビジネスモデルの肝
【3】二つのビジネスモデルは資本市場からどう評価されるか?
【4】評価の違いの源泉
【5】ウェディング業界でも同じ事が起こっている
【6】今後の攻めどころ

【1】リボン型ビジネスモデルとは?

リボン型ビジネスモデルとは、ユーザと事業者の間に立ち、プラットフォームとして両者をつなぐサービスを提供するモデルのことです。

▼リボン型ビジネスモデルとは?
01
このビジネスモデルは、ある片方のニーズだけ満たすだけではいけません。「ユーザ」「事業者」両者のニーズを満たし、両者をつなぐサービスを提供することで、成り立っているビジネスモデルです。

さらには、「ぐるなび・食べログ」のように、同じ飲食店情報サイトを運営しながらも、その立ち位置によって、提供価値、戦い方、ビジネスとしての評価のされ方が異なってきます。

詳細は後述するとして、まずは「ぐるなび・食べログ」を例に取って、そのビジネスモデルの概要・肝を解説していきます。

ユーザには「意思決定を助ける情報」を提供

飲食店などの多くは非常に細かいプレーヤーに細分化されています。整理されていない状態だと、選択肢が分かりませんし、意思決定の参考になりません。

そういった店舗を選ぶための情報を提供する事が、対ユーザへの提供価値です。

店舗には「集客力」を提供

店舗のニーズ、ユーザのマーケティング、簡単に言うと「集客」です。何もしなければ来ないであろう新規のユーザを来店へ繋げること。それが対店舗への提供価値です。

ではプラットフォーマーとして価値を上げるためには?

ユーザと店舗双方のニーズを満たすために、マッチング力をあげる質・量の双方でマッチング精度を上げる事が求められます。

【質】:探したい店舗が見つかる。ターゲットとなるリピートしてくれるユーザにリーチできる。

【量】:店舗、ユーザの双方で大量の参加者を抱えているためマッチングの可能性があがる。


【2】ぐるなび・食べログから学ぶ、2つのビジネスモデルの肝

次に、ぐるなび・食べログの「共通点」「相違点」を挙げながら、それぞれのビジネスモデルの肝を解説していきます。

【共通点1】メディア力を持つ

両社ともに強力なメディア力、利用ユーザ数を持っているのが共通点です。これがなければ集客できません。ユーザを大量に囲い込んでいるからこそ、店舗側への影響力もある。サービスモデルの根幹です。

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【共通点2】収益の柱は店舗

両社ともに、売上の柱は店舗への有料サービスからの売上です(少なくとも初期は。食べログに関してはユーザ課金が本当のポテンシャルなのですが)。後述するように単価の違いこそあれ、店舗からの安定的な収入を確保しています。

【相違点1】店舗への課金単価

店舗への有料課金サービスにおいて、ぐるなびは最大プラン15万円のものまで設けているのに対して、食べログは無料掲載もありで最大でも3万円程度になっています。

これは、後述するように立ち位置の違いから、店舗側への提供サービスも異なるため単価も変わってくるのは当然の結果ですね。

【相違点2】最大の相違点はリボンのどちらに立って価値提供するか

リボン型ビジネスモデルの最大かつ本質的な違いは、店舗・ユーザどちら側の視点からの価値を最大化するか?の立ち位置の違いにあります。

「ぐるなび」は、飲食店への価値提供にフォーカス

ぐるなびは、店舗のビジネス拡大のために何をしたら良いのか?という視点で徹底的に価値提供しています。

そのため、店舗にとってのワンストップ・ソリューション(ひとつの業者であらゆる悩みを解決する)を志向し、集客に留まらず、メニュー開発支援、デリバリーなどの周辺領域への展開支援、IT活用支援なども、飲食店への有料サービスとして展開しています。

▼店舗へのワンストップソリューションを提供する、ぐるなびのビジネスモデル
10縮小ぐるなび社のIR資料より引用

なので結果として、一店舗顧客あたりからの売上高が大きくなるのは当然といえば当然です。

「食べログ」は、エンドユーザへの価値提供にフォーカス

一方で食べログは、完全に逆で、ユーザがどうしたらお店を探しやすくなるか?という視点で価値提供しています。

利用者に対して、自分のニーズにマッチした情報を届けるという視点なので、情報に信頼性を持たせる「口コミ」や、お店の探しやすさを追求する「検索性」などがメインな価値になっています。

店舗は順位や値段・場所・評価などになど、ユーザが目的に適した店舗を探しやすいように徹底的にこだわって作られているのですね。

食べログではユーザに対する価値を磨き抜いた結果、ぐるなびが一店舗当りの売上を拡大していったのとは対称的に、ユーザ課金という新たな収益源を開発するのに成功しています。

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食べログが、4,095万UU、8.8億PVと追い上げる

食べログはユーザ側に立ちユーザに支持されるメディア作りをした結果、2005年からの後発のサービスであるにも関わらず、1996年から先行するぐるなびをユーザ数、PVなどで急速に追い上げる結果となりました。

比較可能な2012年12月でみると、PV数ではまだぐるなびが多いものの、UU数では食べログのほうが逆転しているようです。
04メディア力としては、追いつくか、追い越すくらいに来ているということですね。

食べログは、「ユーザ課金」に成功

また、前述の通り食べログは、ユーザへの価値提供を徹底している結果、ユーザ課金にも成功しています。

ユーザ課金はほぼ全てが粗利の収益的にも非常にオイシく、また課金率が低くとも大量のユーザを抱えているため規模化のポテンシャルも大きい、非常に魅力的な収益モデルです。4,000万UUを超えるユーザを抱える食べログは、今後もさらに伸ばしていくポテンシャルをもっています。


【3】二つのビジネスモデルは資本市場からどう評価されるか?

では、この同じリボン型のビジネスモデルでも、「ぐるなび型」「食べログ型」が資本市場からどう評価されているか見てみましょう。

食べログは推計数倍の事業価値があると評価されている

ぐるなびは、2013年3月期の業績が売上273億円、当期利益20億円と、かなり素晴らしい数字を叩き出しています。にも関わらず、企業価値は約418億円、実績PERも21.3倍に留まっています。

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一方、食べログはぐるなびの数倍の800~2,400億円程度の事業価値があると推測されます。だいぶ食べログのほうが評価されているようです。

※食べログのざくっとした推測方法:食べログは、上場企業であるカカクコムの一つのサービスであるので、単純に比較することは難しいです。カカクコム全体の時価総額4,683億円のうち、食べログが占める割合を、売上、UU、PVの視点で算出します。食べログは売上だと全体の18%で時価総額832億円、UUだと43%で2,026億円、PVだと50%で2,339億円となります。


【4】評価の違いの源泉

長期的に見ると、食べログモデルのポテンシャルが大きい

このステージまで成長すると、長期的な視点でみると、成長性、収益性のいずれにおいても、ユーザ側の立ち位置を取ったサービス展開のほうが魅力的だと思われます。

【成長性】:店舗側に対して価値を出すためにも、メディア力を背景としたユーザ数が前提です。その意味では、食べログはユーザ側に立っていたほうがユーザに継続的に支持されるメディアを作りやすいですし、またCGMでユーザ自らがメディアのコンテンツを制作してくれるため、メディアとしても規模化しやすいです。

【収益性】:食べログは、店舗への営業やサポートなどが小さく、メディアのコンテンツもCGMで回っているため、非常に低コスト構造です。また、前述の通りユーザ側への価値提供を磨き抜いた結果、ユーザ課金という非常に収益性の高い売上源を獲得しています。

ぐるなびモデルが駄目な訳ではなく、メリットもある

一方で店舗側に立ったビジネスモデルが駄目という訳ではありません。メリットもあります。継続利用が多い積み上げ型の収益モデルになるため、早期から手堅くマネタイズしやすいのです。

また、本質的な提供価値を考えると、C側のニーズを叶える食べログに対して、B側のニーズを叶えるぐるなびは明確に棲み分けできています。よって、店舗側を支援するワンストップ・サービスは残り続けます。(メディア力で食べログの後塵を拝してしまった時には、自社のメディアを活用した店舗への集客の力は弱まりますが。)

食べログモデルが「ハイリスク・ハイリターン」で、しばらくずっと収益化しないが、長期的には一度クリティカルマスを超えると、一気に莫大な収益化が可能となる一度へこんでから二字曲線的に伸びるモデルなのに対して、ぐるなびモデルは着実に売上を安定的に増やせる「ミドルリスク・ミドルリターン」の直線的に延びるモデル、という点は事業戦略を選択する際に意識すると良いと思います。


【5】ウェディング業界でも同じ事が起こっている

同じ構造は他の業界でも起こっています。ウェディング業界における「ゼクシィ」と「みんなのウェディング」です。

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みんなのウェディングは、食べログモデル

ゼクシィは、基本的には広告として結婚式場からお金を貰って掲載しています。リクルートが得意とする戦略で、強力なリアル営業網を全国展開して広告を獲得しています。

一方みんなのウェディングは、ユーザが知りたい情報を口コミとして集めて掲載しています。結婚式場の見積もり明細の情報までアップロードされています。

参画式場では、すでに「みんなのウェディング」が上回っている

「ぐるなび・食べログ」の飲食業界で起こったこと同様のことが、結婚式場業界でも起こっています。後発で、ユーザ側の立ち位置に立っているみんなのウェディングが、ネット領域において急速にゼクシィを追い上げているのです。

ブライダルビズネットの調査によると、みんなのウェディングの結婚式場の参画式場数は、ゼクシィ netを超えているとの事です。リアルメディアの巨人として「ゼクシィ」が存在している中、「みんなのウェディング」が追い上げている事がわかります。

【6】今後の攻めどころ

古くからある業界では、ぐるなび・ゼクシィのように事業者側に立ち事業者からお金を貰う形で業界が発展しているケースが多いです。そのような業界で、食べログ・みんなのウェディングのようにユーザ側の立ち位置の領域が空いていないか考えるのは有効な新規事業機会の見つけ方です。事業機会を見つける際には、①進んでいる業界からの先進事例に学ぶ、②類似業界のアナロジーを当てはめるというのが有効な手段です。

では他にはどういった業界で、このフレームワークを活用できそうでしょうか?

例えば、旅行(一休、じゃらんなど)、ヘルスケア(m3.com、SMSなど)、不動産(HOME’s、SUUMOなど)など、事業者視点が強いサービスしかスケールしていない業界は非常に注目度が高いです。今後の皆さんの新規事業創出の参考にしてみて下さい。



以上、『「食ベログ」vs「ぐるなび」~リボン型ビジネスモデルから学ぶ 時価総額1000億円の事業機会の見つけ方』でした。

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