2013年9月26日木曜日

情熱が才能を開花させる

情熱が才能を開花させる

http://www.dhbr.net/articles/-/2109

人材活用において、「情熱」という明確に測定しにくい要素をどう考えるべきだろうか。筆者らによれば、情熱は間違いなく人材に問うべき「資質」であるという。

 いまや世界中の誰もが、血眼になって優秀な人材を探している。ハリウッド、スポーツ界、幹部人材斡旋会社、企業の人事部――皆が一様に、天賦の資質と優れた精神を併せ持ち卓越したパフォーマンスを発揮する人材を探している。数カ月前にダグラス・コナンは、才能豊かな人材の探し方についてHBR.ORGに素晴らしいブログを寄せている。それによると、志願者を評価する際には3つの要素――能力、人柄、チームワークのスキル――に優れているかどうか見極めることが必要であるという。そのような人材を見つける方法についてコナンは有益な助言を与えているが、ここにはある重要な要素が欠けている。
 その要素とは――コナンの3つの資質と同じくらい重要であるが――仕事への情熱である。心理学者が言うところの「内発的動機」だ。これがなければ、どんなに豊かな才能を備えていても優れたパフォーマンスを発揮することはできない。我々は35年間にわたり、モチベーションが創造性にどう影響するかを調査してきた。多岐にわたる人々(子ども、大学生、プロの芸術家、知識労働者)を対象とした研究から明らかになったのは、人々は強い内発的動機を持った時に、より創造性を発揮するということだ。つまり、取り組んでいる仕事への興味、楽しみ、満足、個人的なやりがいが原動力となって生まれる意欲である。
 ノーベル物理学賞受賞者のアーサー・ショーローは、このことを的確に表現している。「その仕事が好きだから奉仕する、という姿勢は重要である。成功する科学者は往々にして、最も優れた才能の持ち主ではなく、好奇心に突き動かされている者である。彼らは謎を解明せずにはいられないのだ」
 内発的動機を持っている人は仕事に深く関与するため、より高次の創造性を発揮する。たとえば、あるマーケティング上の重要な問題があるとしよう。それを解決する作業は、迷路の出口を見つけるようなものだ。仕事で生じる問題には通常、複数の解決策、つまり迷路からの複数の出口がある。そしてたいていの場合、出口へとまっすぐに伸びる非常にわかりやすい道筋が1つある。それは、ほとんどの人が選択する一般的な解決策だ。
 外発的動機――迫り来る期限、厳しい評価への恐れなど――を持つ人は、この安全な道を選ぶであろう。そして迷路からは出られるが、その解決策は凡庸であるため物事を前進させることはない。しかし内発的動機を持つ人は違う。より面白いものを求めて迷路を探求し、創意に富む解決策を見つけるのだ。
 マネジャーは、情熱と創造性の結びつきが生む効果を活用するために、以下の3つのガイドラインを参考にするとよい。
1.採用する際に、能力と同じくらい情熱を重要視する
 人材に情熱を求めなければ、雇った社員は十分な意欲を持たず、高い創造性と生産性を発揮しないかもしれない。コナンが指摘するように、重要な役職の候補者についてはじっくりと時間をかけて、可能な限り入念に知る必要がある。面接では、なぜいまの仕事を選び従事しているのか、仕事で失望した経験は何か、理想の仕事は何かを尋ねよう。仕事について語る候補者の目が情熱で輝いているかを確かめ、新しいことに挑戦する強い意欲を聞き出すのだ。また、候補者の推薦者と話す時にも、情熱に関する言及に留意するべきである。
2.その情熱を育てる
 残念なことに、標準的なマネジメント手法は、意図せずに社員の情熱の火を消し、創造性を殺してしまうことが多い。だが、それらを萎えさせずにおくのはそれほど難しいことではない。我々は、内発的動機を促進できる唯一のカギを発見した。すなわち、社員が情熱を持って取り組んでいる仕事が進展するよう支援することだ。これが「進捗の法則」である。目立たない小さなものでもかまわない。のちの大きな飛躍につながるかもしれないからだ。この法則を実践するには、社員が日々経験する進捗と挫折を理解し、その根本的な原因を究明する必要がある。そして、進捗を阻むものを除去するためにあらゆる手を尽くし、「触媒」(進捗を直接後押しする行為)を提供することだ。
 触媒とはたとえば、創造性を発揮すべき人々に必要な資源を十分に与え、挫折が続かないよう配慮することだ。そして、プロジェクトの目標達成方法に関して、自主性を認めること。優秀な人材を雇ったのならば、その優れた能力を十分に発揮させないのはもったいない。また、成功と失敗の両方から学べるように支援することも必要だ。能力とは固定的なものではなく、長い時間をかけて成長していく。マルコム・グラッドウェルの言う「1万時間の法則」を肝に銘じて、有能な社員にあらゆる成長機会を与えよう。「1万時間の努力を費やさない限り、その分野で革新的なブレークスルーを実現できる専門家にはなれない」。そのような忍耐力を支えるのは、情熱である。
3.自分の情熱を問う
 マネジャー自身が仕事に対する情熱を持っていなければ、成功から遠ざかり、自分を頼りにしている周囲をも落胆させることになる。自身の強みを伸ばすこともできないだろう。筆者の1人であるスティーブは、情熱的な風景写真家でもある。写真家でメンターでもあるクレイグ・タナーは我々に、情熱と能力開発の関連性について重要なことを教えてくれた。タナーの優れたエッセー“The Myth of Talent”(才能の神話)には、次のような文がある。
「遠い先を見据え、情熱を持って訓練すれば、驚くほどの変化が起こる。何もできなかった初心者が、優秀なプロフェッショナルにもなる。挫折しては落ち込んでいた人が、情熱によって才能を開花させ、思うままに発揮できるようになる」
 自問してほしい。あなたは情熱によって、能力を伸ばし存分に発揮できているだろか。周囲の人々はどうだろうか。




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