2013年9月23日月曜日

大規模なオフラインコミュニティを生み出す食材の共同購入ECサイト「Wholeshare」

大規模なオフラインコミュニティを生み出す食材の共同購入ECサイト「Wholeshare」
http://netconcierge.jp/blog/2013/09/ecwholeshare.html

共同購入クーポンサイト「Groupon」がヒットしたことによって、「共同購入」というビジネスモデルに改めて注目が集まるようになった。今では、クーポンのみならず他業種においても、共同購入サービスを提供するECサイトが出てきている。
そこで今回は、地元で生産された新鮮な野菜や果物、肉、魚、パン、チーズなどの食品を共同購入できるECサイト「Wholeshare」をご紹介したい。
当ブログでは過去にも、自然食材をオフィスや学校などのコミュニティに配達するECサイト「Farmigo」を取り上げたが、Wholeshareは共同購入グループの構成がFarmigoとは異なる。
Farmigoは知り合い同士(職場の同僚、学校の仲間など)でプライベートなグループをつくるのが基本だが、Wholeshareは知らない人同士でパブリックなグループをつくれるようになっているのだ。
Wholeshareには、約200人ものメンバーが所属している大きなグループもある。このように、知らない人同士をつなげて大規模なオフラインコミュニティを生み出していることが、Wholeshareの大きな特徴だ。

Wholeshareのしくみとは?

では初めに、Wholeshareのしくみからご紹介しよう。
まず最初にユーザー登録をする際、2つの選択肢がある。「Start a group(新しく共同購入グループをつくる)」か「Find a group(既に存在する共同購入グループに参加する)」だ。
「Start a group」を選択すると、グループの取りまとめを行うコーディネーターとなり、自分自身が中心となって共同購入グループをつくっていくことになる。グループの最少人数は設定されていないので、まずは近所に住む友人や家族などを数人集めればグループをつくることができる。
コーディネーターになると、配達スケジュールを管理したり、配達されてきた食材を業者から受け取ったり、受け取った食材を各メンバーに引き渡したりなどの仕事が発生するが、その分メンバーから手数料を徴収することも可能となっている。
「Find a group」を選択すると、自分の近所にすでに存在する共同購入グループを探して、そこに加わることができる。共同購入はしたいが、グループの管理などの仕事をする時間や労力はないという人にはこちらが推奨されている。
どちらかの方法でグループのメンバーになると、そのグループの配達場所(コーディネーター/メンバーの自宅やコミュニティセンターなど、コーディネーターが設定する)に食材を届けることが可能な、近所の農家や卸売業者の商品一覧を見られるようになる。
買い物をしたいユーザーは、そのときに設定されているオーダー締切日までに、ほしい商品を自分のショッピングカートに入れておく。Wholeshareの場合、メンバーごとの最低注文金額というものはなく、グループとしての最低注文金額のみが設定されている。その額は各業者によって異なるが、だいたい100ドル(約1万円)~500ドル(約5万円)である。
オーダー締切日までにグループとしての最低注文金額を超えた場合のみオーダーが確定され、オンライン決済が行われたのち、グループの配達場所に食材が届けられる。もし最低注文額に届かなかった場合は、再び新たなオーダー締切日が設定される。
農家や卸売業者は、要は配達先が1つ増えるだけなので、ビジネスプロセスを大きく変更することなく新たなマーケットを手に入れることができる。売れるかどうか分からないファーマーズマーケットで何時間もの時間を費やすよりも、すでに購入を決めてくれた消費者たちにまとめて食材を届けるだけでよいという利便性も大きなポイントだ。
オーダーが確定されたら、各メンバーは食材が届く日に配達場所へ出向いて行き、自分がオーダーした食材を受け取る。グループによっては、追加手数料を払えば自宅まで届けてくれるところもあるそうだ。

ミッションは他では手に入らない食材を届けること

Wholeshareの創業者はPeter Woo(以下ウー)氏。大学卒業後、インターネットプロバイダーに就職。その後、同じ大学に通ったMatthew Hatoun氏とともに、新鮮で質の高い地元の食材を手頃な価格で手に入れられるプラットフォームをつくろうと考え、2009年にWholeshareを立ち上げた。
「農家や卸売業者は主にスーパーマーケットやレストランに食材を販売しているが、消費者に直接販売しても構わないとも思っている。しかしそこには最低注文金額というものが存在し、それはおよそ300ドル(約3万円)~500ドル(約5万円)。1つの家庭が一度に注文するには大きすぎる額だ」(ウー氏)
1つの家庭では無理ならば、近所に住むいくつかの家庭でいっしょに注文すればよい。農家や卸売業者から直接食材を購入することができれば、スーパーマーケットなどの小売業者から購入するよりも20%程度安くなるうえ、より新鮮なものを手に入れることができる。
Wholeshareのミッションは、近所のスーパーマーケットやコンビニなどでは手に入らない食材を人々に届けることだという。
「たとえばニューヨーク州北部では、1つのスーパーマーケットにはだいたい300種類の主要食材が並んでいるが、その一方で、そういったスーパーマーケットには並ばないような食材がまだ何千点も存在するんだ」(ウー氏)

オフラインコミュニティの発生

Noel Thompson(以下トンプソン)氏は、Wholeshareで2番目に大きいグループ「NewburghFoodCo」のコーディネーターだ。このグループは2013年3月につくられたばかりだが、すでに200人近くのメンバーが存在している。
ニューバーグはニューヨーク州に属する街だが、街の中に大型スーパーマーケットはなく、小さな食料品店が数軒あるのみ。わざわざ車で近隣の街へ出向いて行かなければ、質の良い食材はなかなか手に入らないそうだ。
「ニューバーグには、新鮮で体にいいオーガニックな食材を手に入れる場所が欠けていると思ったんだ。Wholeshareを利用し始めたおかげで、地元の農家33軒をはじめとしたいろいろな業者から、3500種類以上の食材を購入できるようになった」(トンプソン氏)
どんどん新しいメンバーも増え、頻繁にリピート購入をするメンバーも増え、1回のオーダーのボリュームも大きくなっているとのこと。しかし、メンバーから好評なのは、安くいろいろな食材を購入できる点だけではないという。
「食材を受け取りに来たメンバーたちは、皆なかなか帰らないんだ。メンバー同士でずっと食材やレシピについておしゃべりをしている。『あなた、これ買った?』『この食材で何をつくるつもり?』『これ、美味しいからオススメだよ』なんていう風にね」(トンプソン氏)
そう、もともとは他人同士だったメンバーたちがオフラインコミュニティを形成しているのである。
今は食材の配達/受け渡し場所として教会の中のスペースを使っているが、トンプソン氏はいずれきちんとした場所を借りて、「食材の受け渡し場所兼カフェ」のようなお店を開くことも視野に入れているそうである。

消費者にメリットの多い「共同購入」

Wholeshareのしくみは、食材を購入する消費者と、食材を販売する農家や卸売業者との間にWin-Winの関係を生み出している。購入者は、スーパーマーケットなどの小売業者から購入するよりも安く、より新鮮な食材を手に入れられる。販売者は、これまではリーチできなかった新たな顧客を獲得できる。
Wholeshareにとっての追い風は、現代人はお金を払ってでも質の良い食材を手に入れたいと思っていること、そして、オンラインで食材をオーダーするというしくみがメジャーなものになってきていることだ。
今後の課題は、より多くの消費者に「知らない人同士が集まって食材を共同購入する」というしくみに慣れてもらうことだという。現在はニューヨーク州内に存在する約100のグループに対して、5軒の大型卸売業者と20~25軒の農家の商品を提供するぐらいの規模だが、これから米国全土に拡大していく予定だ。
「知らない人同士が集まって何かを共同購入するという方法はずっと昔から存在してきた。特に1970年代はポピュラーだった。しかしそれ以降に生まれた人たちは共同購入になじみがない。僕たちは、共同購入をオンラインという新しいかたちでカムバックさせようとしているんだ」(ウー氏)
食材にかかる費用が安くなり、より多くの種類の高品質な食材を手に入れることができ、地元の農家をサポートすることができ、オフラインコミュニティを通して新しい友人をつくることもできる。消費者にとってメリットの多い「共同購入」というビジネスモデルは、今後いろいろな業界で取り入れられるようになると考えられる。
また、Wholeshareでは一般的な食材宅配サービスと異なり、生産者が直接消費者に食材を届けているという点も注目するべきポイントだ。消費者が生産者の顔を知ることで、信頼関係が構築され、コミュニティ内で「もっと地元の農家を応援しよう」という意識が生まれやすくなっている。この点も、Wholeshareの大きな社会的存在価値だと言えるだろう。

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