2013年9月4日水曜日

正攻法と人目を引く奇策との組み合わせ

 両備ホールディングス(岡山市)の会長、小嶋光信(68)は人口減社会の下での鉄道経営を考え続けてきた経営者だ。06年に引き継いだ和歌山電鉄(和歌山市)など廃止寸前の事業者を傘下に収め、業績や利用者数を回復させた小嶋は「公共交通の再建請負人」として知られる。
 その手法は「正攻法と人目を引く奇策との組み合わせ」。和歌山電鉄では、勤務体系の大胆な組み替えで人件費を半減させたが、それだけでは客は増えない。同時に気鋭のデザイナー、水戸岡鋭治(66)に「乗りたいと思わせる面白い車両」の設計を依頼し再建を軌道に乗せた。

地方発 成長のヒント(3) 「バリアアリー」

2013/9/4付
 介護業界で「夢のみずうみ村」方式が広がっている。発信元は作業療法士の藤原茂(64)が理事長を務める、社会福祉法人夢のみずうみ村(山口市)だ。
手すりのない廊下や段差の多い介護施設を提唱する藤原氏
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手すりのない廊下や段差の多い介護施設を提唱する藤原氏
 「フランチャイズチェーン(FC)の一つとして傘下に入りたい」。藤原には今、病院の理事長などからこんな申し出が次々と入る。受けた誘いは70件以上。藤原はFC展開はほぼ断るが、ノウハウは教える。直営で千葉県浦安市と東京都世田谷区に進出したほか、まねる施設が相次ぐ。
 広がる理由は「通ううちに要介護度が軽くなる人が多い」まれな施設だからだ。「上げ膳据え膳」が介護施設の主流だが、それでは利用者の生活力は戻らない。手厚い介護が逆に生活力を奪う矛盾を経験した藤原が「自ら動き、選ぶことで回復できる」仕組みを編み出した。
 2001年に山口市に設立したデイサービスセンター。廊下には手すりがなく段差も多い。利用者は家具などにつかまりながら歩く。昼食時には足の不自由な人ですら歩いて自分の料理を運ぶ。「バリアフリーならぬバリアアリーです」と藤原は笑う。施設での過ごし方もお仕着せではない。陶芸や料理教室、プールなど200種類以上から、本人が考えて選ぶ仕組みだ。
 10年の国勢調査で人口が減少に転じた日本。だが山口県は1986年から減り始め、高齢化率は全国4位だ。人口減の先進地域でもまれた事業は、これから問題が深刻になる都市で展開するときに強い武器になる。
 両備ホールディングス(岡山市)の会長、小嶋光信(68)は人口減社会の下での鉄道経営を考え続けてきた経営者だ。06年に引き継いだ和歌山電鉄(和歌山市)など廃止寸前の事業者を傘下に収め、業績や利用者数を回復させた小嶋は「公共交通の再建請負人」として知られる。
 その手法は「正攻法と人目を引く奇策との組み合わせ」。和歌山電鉄では、勤務体系の大胆な組み替えで人件費を半減させたが、それだけでは客は増えない。同時に気鋭のデザイナー、水戸岡鋭治(66)に「乗りたいと思わせる面白い車両」の設計を依頼し再建を軌道に乗せた。
 和歌山では今、水戸岡の設計したいちご電車が人気だ。利用者は年192万人から220万人に回復。収支も5億円の赤字からほぼ均衡するまで改善した。「危機こそ成長の好機」と話す小嶋。少子高齢化が進む地方で得たノウハウは大都市圏ばかりか、今後人口減が始まるアジアでも生かし得る。

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