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MTR誌によれば、シリコンバレーは1960年代にはすでにイノベーションハブとして注目を集めつつあった。その複製の試みも始まっていたが、大きな成功が見られないまま90年代に入る。そして、戦略論の大家Michael Porterがついに「シリコンバレーの作り方」を呈示した。その方程式はこうだ。
- 成長産業を選定する
- リサーチパークを大学の隣に建設する
- 助成金を準備して、企業や人材を呼び込む
- ベンチャーキャピタルファンドを用意する
そして、この方程式に基づいて世界中でシリコンバレー作りが試みられた。その数は数百に達し、何兆円もの資金が投じられたが、成功することはなかったという。このMichael Porterの手法は政府主導のトップダウン型である。
MTR誌は、シリコンバレーの複製の難しさは、人とその関係性という、より文化的な側面にあるとする。つまり、シリコンバレーのように、人と情報が容易に移動し、共有されていく環境を作れるかがポイントで、単に箱とお金を用意すれば良いというものではない。
MTR誌曰く、シリコンバレーは「Facebookが登場する遥か以前から存在していた、巨大なリアルワールドのソーシャルネットワーク」なのだという。
イノベーションハブの作り方--シリコンバレーvsイスラエル
Eastman Kodak。もしかすると、すでに何の会社だか分からないという人もいるかもしれない。写真用フィルムで有名であった同社は、デジタル化の流れに乗り遅れて2012年1月に破綻した。
そして、今月4日に再生計画が認められ、商業用印刷会社として再スタートを切ったところである。10年前には6万4000人いた従業員は、8500人にまで減ってしまった(Bloomberg Businessweek)。
Kodakのケースは、多角化に成功した富士フィルムと対比され、イノベーションへの取り組みの失敗事例として取り上げられることが多い。フィルムビジネスで成功していたが故に、イノベーションへの取り組みにおいて劣後し、最終的には破綻にまで追い込まれたのである。
これが、国家レベルで起きれば、もはや国民の行き場はなく、国民生活の破綻となる。それ故に、今どんなに成功していても、イノベーションには取り組まなくてはならない。それは企業のレベルにおいても、国家のレベルにおいても当てはまる。
そこでよく議論に上るのが、シリコンバレーのようなイノベーションの集積地である「イノベーションハブ」が作れないかというものだ。『MIT Technology Review』(MTR誌)9~10月号に掲載された「The Next Silicon Valley」という興味深い記事を引用しつつ議論してみたい。
シリコンバレーの作り方
MTR誌によれば、シリコンバレーは1960年代にはすでにイノベーションハブとして注目を集めつつあった。その複製の試みも始まっていたが、大きな成功が見られないまま90年代に入る。そして、戦略論の大家Michael Porterがついに「シリコンバレーの作り方」を呈示した。その方程式はこうだ。
- 成長産業を選定する
- リサーチパークを大学の隣に建設する
- 助成金を準備して、企業や人材を呼び込む
- ベンチャーキャピタルファンドを用意する
そして、この方程式に基づいて世界中でシリコンバレー作りが試みられた。その数は数百に達し、何兆円もの資金が投じられたが、成功することはなかったという。このMichael Porterの手法は政府主導のトップダウン型である。
MTR誌は、シリコンバレーの複製の難しさは、人とその関係性という、より文化的な側面にあるとする。つまり、シリコンバレーのように、人と情報が容易に移動し、共有されていく環境を作れるかがポイントで、単に箱とお金を用意すれば良いというものではない。
MTR誌曰く、シリコンバレーは「Facebookが登場する遥か以前から存在していた、巨大なリアルワールドのソーシャルネットワーク」なのだという。
そこで獲得されるスキルは、軍隊という特性上さまざまなチャネルから入ってくる大量のデータを解析して何らかの判断を下すというものだ。例えば、GoogleとFacebookを合わせたサイズのデータベースを使って演習をやるらしい。
これが民間に適用されれば、例えば「ビッグデータから顧客の好みを解析し、製品開発を支援する」となったりする訳だ。そして、実際に兵役を終えた若者たちが、軍隊で学んだスキルを活かして就職したり、起業したりすることとなる。
その結果、あるベンチャーキャピタリストが言うには、「世界のどこよりもビッグデータ関連のエンジニアやアナリストが集積しているのがイスラエルだ」ということになる。イスラエルは、国民1人当たりのベンチャーキャピタル投資が最も高い国なのだそうである。その首都テルアビブは、政府の強い関与のもとに作られたイノベーションハブであると言えるだろう。
方程式はあるのか
これまでの失敗の歴史を振り返れば、恐らく方程式というものはないだろう。イノベーションハブとは、インドの家庭料理のようにいろいろなスパイスの組み合わせで出来上がる奇跡のようなものかもしれない。
ただ、イノベーションの持続性という点では、何よりも人材が流れ込み続ける仕組みになっているかが重要なのだと思う。イスラエルであれば、国民の義務として若者が流入し続けるし、シリコンバレーでは、国内だけでなく、海外からも優秀な人材が供給され続けている。
また、イノベーションハブの定義も重要だ。スタートアップ企業が集まるだけがイノベーションではないだろう。基礎研究にフォーカスする方法もあれば、応用フェーズに特化する方法もある。
イノベーションハブの設計に人や文化が重要な側面を占めるのであれば、かつて日本が応用を得意としたように、各国の産業の特性や国民性などに応じて、イノベーションハブを定義するべきだろう。
シリコンバレーの複製が全てではない。ただ、何もしないことは、Eastman Kodakの複製を意味することは間違いない。
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